診療科 放射線科

診療概要

診療概要

放射線科とはあまり耳にしない名称と思いますが、主要病院には放射線科医が勤務しています。
放射線科の仕事としては大きく

  • 診断部門
  • 治療部門

に分かれています。

放射線診断部門

診療内容

当院で撮影するCT/MRI/シンチ検査について、患者さんひとりひとりに合わせ、最も必要な情報が得られるように撮影を指示し、結果を解析・診断し、主治医に報告しています。他院において撮影された画像検査を解析・診断する場合もあります。また、近くの病院から撮影依頼をいただき、撮影および診断を行い、返却することにより地域医療にも関与しています。

エックス線を使用したその他の検査/治療として、血管造影検査/経血管的治療(IVR:画像下治療)があります。血管にカテーテルといわれる細い管をいれ、そこから造影剤や薬剤などを流し検査や治療を行います。当院の主な対象疾患は肝細胞癌・透析シャント不全・子宮筋腫ですが、出血、動脈瘤、血管拡張、その他の悪性病変など広汎に対応しています(非血管IVRも行っています)。
救命救急センターからの依頼がある場合には緊急の画像解析、交通外傷などの命に関わる重篤な出血を呈する患者さんにカテーテルを用いた緊急治療を行っています。当科では24時間体制で対応、時期を逃さずに迅速な対応を行うように心がけています。

実績

画像診断(2022年)

読影件数 全体件数
CT 11,404件 24,462件
MRI 4,461件 5,779件
RI 892件 892件
その他 胸腹単純X線、透視、血管造影、超音波など

IVR・血管造影(2022年 全411例)

これまでの症例

  • 動脈塞栓術
    (肝動脈化学塞栓術(TACE)、動脈瘤塞栓術(TAE)、子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)、気管支動脈塞栓術(BAE)、部分的脾動脈塞栓術(PSE)、外傷・産科・その他による止血(TAE))
  • 動注(肝動注、頭頚部癌動注)
  • 動注用リザーバー留置術
  • 静脈塞栓術
    バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)、経皮経肝動静脈癌塞栓術(PTO)、肝内門脈枝塞栓術(PTPE)
  • 経皮的血管拡張術(PTA)・ステント留置術、経皮的シャント血管形成術(PTA、VAIVT)
  • 血栓溶解術
  • 血管内異物除去術
  • 経皮的CTガイド下穿刺(生検・ドレナージ等)
  • 副腎静脈サンプリング(AVS)
  • 下大静脈ステント留置術

患者さんへ一言

放射線科(診断部門)は“Doctor’s doctor”と言われおり、患者さんと直接お会いする機会が少ないため馴染みの薄い科と思いますが、放射線に対する知識、画像診断に対する知識を持ち、他科の先生と協力して診療にあたっています。

その他

子宮筋腫に対する低侵襲治療(子宮動脈塞栓術:UAE)も行っています。
カテーテルを子宮動脈に進め、血流を一過性に遮断し、筋腫を殺す治療です。脚のつけ根からカテーテルを入れ治療を行い(孔は数mm程度)ます。入院期間は2-3日程度です。興味のある方は御相談ください。

子宮動脈塞栓術:UAEについて

放射線治療部門

診療内容

各種がんに対するリニアックによる外照射を中心に、放射線治療を行っています。 放射線治療は手術、化学療法(抗がん剤)とともにがん治療の三本柱です。このなかで、放射線治療は手術と同じく、がんとその周辺領域のみを治療する局所治療です。

ただし手術と異なり、体に直接メスを入れることなく、がんを小さくしたり、消滅させたりできます。しかも体に対する負担が比較的少ないので、ご高齢の方や合併症により手術困難な方も受けられる治療です。

当院で行っている主な治療

がんに対する放射線治療

がんの種類や進行の度合い、患者さんの全身状態に応じて目的は変わります。1回数分間の治療を1日1回、月曜日から金曜日までの週5回治療で、治療目的により数回から35回程度の治療を行います。

  1. 治癒を目的とした治療(根治照射)、放射線治療単独、抗がん剤と併用して行う放射線治療(化学放射線療法)
    • 臓器の形態や機能を温存することが可能な治療です。
    • 頭頸部がん、肺がん、食道がん、前立腺がん、悪性リンパ腫など。
  2. 手術前、または後の治療(術前照射、術後照射)
    • がんをできるだけ小さくして切除をしやすくするために手術前に放射線治療をすることがあります。また手術で切除しきれずに残ったがんを消滅させ、再発の可能性を下げるために手術後に治療をすることもあります。
    • 乳がん(乳房温存術後、乳房切除術後)、頭頸部がん、食道がん、直腸がん、肺がんなど。
  3. 症状をやわらげるための治療(緩和照射)
    • 骨転移による痛み、脳転移による神経症状、がん組織による気管、血管、神経などの圧迫による症状をやわらげます。生命を延ばすことに寄与しないかもしれませんが、一日一日を安楽にすごしていけるようにする治療です。

定位放射線治療

小さな病巣に対して、放射線を多方向から集中的に照射することにより、周囲の正常組織の線量をできるだけ少なくして、病変に高い線量を短期間に照射する高精度放射線治療です。
当科では、脳・頭蓋内腫瘍と肺腫瘍の治療をおこなっています。脳・頭蓋内腫瘍は、脳転移、聴神経腫瘍、脳動静脈奇形などで、病変のサイズが直径3~4cm以下、数が3個以下を原則適応としています。治療期間は、病変の大きさ,数、部位および予想される副作用の程度によりますが、短ければ1回、長くても1~2週間程度です。また肺腫瘍は、原発性肺がん(直径5cm以内で、かつ転移なし)と転移性肺がん(直径5cm以内で、かつ3個以内で、かつ他病巣なし)を治療の適応としています。治療期間は1~2週間程度で、外来通院での治療も可能です。
手術が困難な部位にできた病変や合併症のため手術ができない方、あるいは高齢の方でも可能な非侵襲的で安全な治療です。

全身照射

骨髄移植をうける直前に、免疫力を落として移植される骨髄が生着するために行います。白血病、悪性リンパ腫など。

良性疾患の放射線治療

甲状腺眼症、ケロイド、血管腫など。

非密封放射性同位元素ラジウム(223Ra)、ストロンチウム(89Sr)を用いた骨転移治療、ホルモン療法抵抗性前立腺がんの骨転移に対してのラジウム内照射、各種がんの骨転移による痛みに対してのストロンチウム内照射を行っています。放射線同位元素を静脈注射する治療です。体内に投与された放射線同位元素は骨転移部に集まって長くとどまり、内部から放射線(アルファ線、ベータ線)照射します。
外来での投与が可能で、ご家族など周囲の方々への放射線被曝の心配もありません。

実績

放射線治療症例数

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
全患者数(新患+再診) 304 331 263 264 289
新患数 268 277 227 236 260
のべ治療患者数 6,851 6,784 5,729 5,224 6,085

原発巣別新患症例数

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
脳・脊髄 0 2 2 2 3
頭頚部 24 28 34 19 14
肺・縦隔 35 29 29 39 30
乳房 85 96 56 67 76
食道 7 11 6 7 7
胃・小腸・大腸・直腸 20 14 15 27 16
肝・胆・膵 10 5 4 6 3
泌尿器 43 44 50 50 77
婦人科 3 5 3 4 1
血液 29 32 16 6 18
皮膚・骨・軟部 2 3 3 0 3
原発不明/その他 1 2 0 2 1
良性疾患 9 6 9 7 11
合計 268 277 227 236 260

特殊照射症例数

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
全身照射 6 8 3 0 2
定位照射(脳) 13 15 5 6 9
定位照射(肺) 2 9 5 14 8

放射線内用療法症例数

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
塩化ラジウム 0 4 1 1 2

患者さんへ一言

放射線治療には、ほとんどが外科、内科など他の診療科から紹介されて放射線科を受診します。各診療科主治医から放射線治療について簡単に説明がされている場合もありますが、専門医である放射線治療医とよく相談してから、実際に治療をするかどうかを決めることが大切です。
放射線治療医は、これまでの経過、検査結果などをよく検討し、放射線治療を行う意義について、患者さんご本人およびご家族と相談します。放射線治療を受ける場合、“その目的は何か”、“治療によってどのような副作用がおこりうるのか”、“放射線以外の治療法にはどのようなものがあるのか”など、放射線治療のメリットとデメリットを納得するまで、十分相談し、治療をするのか、しないのかを決めるのがよいと思います。

その他

非密封放射性同位元素ラジウム(223Ra)、ストロンチウム(89Sr)を用いた骨転移治療、ホルモン療法抵抗性前立腺がんの骨転移に対してのラジウム内照射、各種がんの骨転移による痛みに対してのストロンチウム内照射を行っています。放射線同位元素を静脈注射する治療です。体内に投与された放射線同位元素は骨転移部に集まって長くとどまり、内部から放射線(アルファ線、ベータ線)照射します。
外来での投与が可能で、ご家族など周囲の方々への放射線被曝の心配もありません。