糖尿病センター 合併症の早期発見

糖尿病による合併症を予防するには、定期的な診察や検査が必要となります。
当センターは、以下の委託検査に対応しています。

合併症検査依頼票のダウンロード

検査依頼票は全検査統一の様式となっております。以下より、ダウンロードしご利用ください。

頸動脈エコー

目的

頸動脈内のプラーク(頸動脈壁に油のからまり)について調べる検査です。

検査内容

検査は痛みが無く、簡単に短時間で動脈の状態を観察できます。
首の動脈(頚動脈)壁に油のかたまり(プラーク)がたくさん見つかった場合、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)および脳梗塞を起こす危険性が高いことが報告されています。
以下は、頚動脈のプラークの実例を示します。

(上段)頚動脈にプラークのない50歳代2型糖尿病男性
(下段)頚動脈にプラーク(矢印:白く光っている部分)が多発している60歳代2型糖尿病女性

備考

このプラークがいくつあっても通常自覚症状はまったくありませんが、プラークの形、大きさ、場所や血圧などの影響でプラークが血管壁からはがれ落ち、ひとだび脳の血管をつまらせると脳梗塞の原因になります。

脈波伝播速度(PWV)および足関節・上腕血圧指数(ABI)検査

目的

脈波伝播速度(PWV)
動脈の硬さ(動脈硬化)を調べる検査です。
動脈硬化が進行していないか、治療効果があるか、今後の心血管疾患の起こりやすさの評価に役立ちます。

足関節・上腕血圧指数(ABI)
ABIは下肢の動脈内にせまいところ(狭窄)やつまりかかっているところ(閉塞)がないか調べる検査です。また、動脈壁が骨のように硬くなっている(石灰化)かも検査できます。

検査内容

同一の検査装置を用いて一度に行います(下図)。

備考

下肢に痛みがある場合や下肢の静脈に血栓がある場合は(禁忌であるため)検査することができません。

神経伝導検査

目的

神経伝導速度検査では、筋肉を動かすときに働く運動神経と外からの刺激を感じるときに働く感覚神経を電気で刺激して、神経の働きに異常がないか調べます。

検査内容

電気が伝わるスピードは太い神経線維ほど速くなります。
一般に、糖尿病神経障害では細い神経線維から働きが弱くなりますが、太い神経線維まで働きが低下すると、電気が伝わるスピードも遅くなり、神経伝導検査に異常がでます。
上肢にある正中神経の運動神経伝導速度検査の結果を示します。

(右図)神経障害を合併している例
(左図)神経障害を合併していない例

備考

神経障害を合併している例では、指先を電気刺激することで生じた電気の波形(電位)が手首や肘まで到達するのに長い時間がかかっています。また、生じた波形の大きさ(高さ)も小さいのが解ります。

心拍変動検査

目的

自律神経の機能の異常を調べる検査です。

検査内容

心臓の拍動(心拍)は自律神経の活動性に応じて一定のリズムで揺らいでいます。自律神経の働きが弱まる(自律神経障害になる)と揺らぎは小さくなります。

(左図)自律神経障害のない20歳代1型糖尿病男性の心拍変動
    (心拍は一定のリズムで揺らいでいる)
(右図)心自律神経障害を合併した30歳代2型糖尿病男性の心拍変動
    (心拍の揺らぎがほとんどみられない)

備考

  • 心拍変動検査は安静時心電図とセットで行います。
  • 年齢や性差等の影響もありますが、概ね心拍変動係数が安静時2%未満、深呼吸時5%未満なら自律神経の働きが低下していると考えます。

セット検査

上記の検査をまとめて検査します。1時間半など時間がかかります。

検査内容

  • 頚動脈エコー
  • 脈波伝播速度(PWV)および足関節・上腕血圧指数(ABI)検査
  • 神経伝導検査
  • 心拍変動検査

備考

糖尿病は全身の合併障害が同時に進む場合がありますので、見逃しのないように1-2年に1回はセット検査を行うことをお勧めします。