糖尿病センター シックデイ時の対応

シックデイとは?

糖尿病者が何らかの原因で体調不良となり、十分に水分や食事をとることができず、通常の血糖管理が難しくなった状態をシックデイと言います。
体調不良の最も多い原因は、かぜやインフルエンザなどの感染症で、新型コロナウイルス感染症も含まれます。その他にも胃腸や心臓などの病気、腰や膝などの痛みによるストレスも原因となります。

シックデイ時の高血糖

体は重い病気や強いストレスがあると、それと戦うためにたくさんのストレスホルモンを作り出します。これらのストレスホルモンの多くは血糖値を下げるインスリンの作用を妨げてしまう働きがあるため血糖値が上昇します。
このような場合、たとえ食事をまったく食べなくても血糖値は高くなります。
インスリンを打っているような糖尿病者が、シックデイ時にインスリンを自己判断で中止してしまうと、血糖値はどんどん高くなり、最後には命に関わるような高血糖になる危険性があります。

よくある間違った対応の事例

  • 熱があり水分を十分にとれないまま様子をみてしまい脱水となる。
  • いつも通り食事をとれないためインスリンをすべて中止し、危険な高血糖になる。
  • 意識がもうろうとするまで放置して、救急車で病院に運ばれる。

以上のような対応の遅れは命にかかわる場合があります。
常に適切な対応をして、救急搬送につながらないように、以下の内容をぜひ確認してください。

シックデイ時の適切な対応

正しい知識と適切な対応で、シックデイ時でも危険な状態への進行を予防することが可能です。

  • 安静と保温に努める。
  • 飲み物やスープで水分を十分とる(30分毎に120-180ml)
    ただし、甘いジュース類や乳酸菌飲料は血糖値を更に上げてしまうため避ける。
  • 主食となるお粥やうどんなど炭水化物(でんぷん質)を主に含む食品の摂取に努める。

以下が主に炭水化物を含む食品です

炊いた白米(ご飯)50グラムに相当する炭水化物食品例

  • 食パン(6枚切り) 0.5枚
  • 干しうどん/ソバ/パスタ 20グラム
  • 生サツマイモ 60グラム(皮付き70グラム)
  • 生ジャガイモ 110グラム(皮付き120グラム)中1個
  • 生長芋 120グラム(皮付き130グラム)
  • 生里芋 140グラム(皮付き170グラム)中3個
  • 生カボチャ 90グラム 1/8個
  • 生トウモロコシ 90グラム 中1/2本
  • 食欲がないときも、ご飯100グラム相当以上の食品を工夫して食べるようにしてください。
  • くだもの、フルーツ類は高血糖を悪化させるので控えてください。

インスリンは自己判断で中断せず、以下の指示に従う。

事前に担当医からシックデイ時のインスリン指示がある際は、それに従ってください。

食事時に超速効型インスリン* を使用している場合

*超速効型インスリン(五十音順)
アピドラ、ノボラピット、ヒューマログ、リスプロBS、ルムジェブ

そのとき食べた主食量に応じて、いつもの量を調節して食直後に投与してください。

食べた主食量超速効型インスリン* 投与量
いつもの8割以上いつも通り全量
いつもの半分から8割ほどいつもの2/3ほど
いつもの2割から半分いつもの1/3ほど
いつもの2割以下中止

上記の投与量の調節は、シックデイ時以外の理由で主食の量が少ない際にも使用可能です。

自己血糖測定器が利用可能な場合

4時間毎又は毎食前と眠前に血糖値を測定する。
主食をほぼ食べることができないときは、血糖値に応じて上記の超速効型インスリン* を4時間毎又は毎食前と眠前に皮下注してください。

血糖値超速効型インスリン投与量
250以上2単位
300以上3単位
350以上4単位
400以上5単位

1日1回又は2回持効型インスリン** を使用している場合

**持効型インスリン(五十音順)
  グラルギンBS、トレシーバ、ランタス、ランタスXR、レベミル

いつも通り食べられなくても中止しない。
深夜(夕食3時間以降)から早朝(朝食前)にかけて測定した血糖値の一番低い値に応じて、その後に投与する量を減らしてください。

深夜から早朝の血糖値持効型インスリン** 減らす量
70未満いつもの1割ほど減
50未満いつもの2割ほど減

シックデイ時に減量や中止が必要な糖尿病薬(インスリン以外)

体調不良時には、以下のように食事量もみながら糖尿病薬の減量や中止をする必要があります。

種類食事量2/3以上食事量2/3-1/3食事量1/3以下
スルホニル尿素薬通常量
(直近の血糖管理状態により減量)
半量中止
速効型インスリン分泌促進薬中止中止中止
α-グルコシダーゼ阻害剤中止中止中止
メトホルミン中止中止中止
イメグリミン中止中止中止
チアゾリジン薬通常量中止中止
DPP-4阻害薬通常量通常量
(中止可)
通常量
(中止可)
SGLT2阻害薬中止中止中止
GLP-1受容体作動薬中止中止中止
  • DPP-4阻害薬のみ食事量にかかわらず内服可能だが、食事量が少なく血糖管理良好な場合は中止しても良い。
  • 体調不良時は食事量にかかわらず副作用として消化器症状があるα-グルコシダーゼ阻害剤、メトホルミン、イメグリミンおよびGLP-1受容体作動薬は原則すぐ中止する。
  • SGLT2阻害薬はブドウ糖摂取の少ない状態で内服すると正常血糖ケトアシドーシスを発症する危険性があり中止する。
  • 速効型インスリン分泌促進薬は食事量を確認して食後に内服することは勧められないため中止する。
  • スルホニル尿素はある程度摂食可能でも直近の血糖管理良好な場合には適宜減量する。

※ご自分の糖尿病薬がどの種類か担当医又は薬剤師に確認してください。

以下の状況のときは、かかりつけの医療機関に問い合わせが必要です。

  • 体調不良でどうして良いか解らないとき
  • 1-2日間改善なく体調不良が続くとき
  • 6時間以上頻回に吐く又は下痢するとき
  • 24時間以上血糖値270mg/dl以上、特に350mg/dl以上が続くとき