TOP医学小知識>虫歯が原因となる病気

医学小知識

虫歯が原因となる病気

太田西ノ内病院 歯科

 福島県の誇り野口英世博士は「口唇や舌の癌腫の如きものは、咬傷や鋭利なる歯牙の切端によりて、屡屡発生することは、実地上争うべからざる所の事」と述べておりますが(口腔の腫瘍に就きて、歯科医学叢談、第4巻第2号、明治32)、ここでいう「鋭利なる歯牙」というのはカリエスによって崩壊した歯のことで、虫歯が口唇や舌の癌の原因になるといっている訳です。
 今、虫歯が癌の原因になると考えている人は少ないと思いますが、虫歯が進行し歯髄にまで達すると歯髄炎を惹き起こします。これは、ほとんどの人は経験したことがあると思いますが、末期の癌にも匹敵する激しい痛みを伴います。
 歯は顎骨という骨の中に植立されておりますので、一度歯髄炎になると、その炎症はすぐに骨に波及し、骨炎(骨膜炎、骨髄炎)を惹起し、さらに骨外へと拡がっていきます。上顎の場合は上顎洞に波及し上顎洞炎になります。蓄膿症といわれるものの約半数は虫歯が原因といわれております。
 昔から「口にできたオデキは命とりになる」と良くいわれますが、口は喉に近く、しかも疎性結合組織という非常に柔らかい組織からなる隙が多数存在しているため、骨外に波及した炎症はこの隙を通して急激に広範囲に広がりやすく、いわゆる蜂窩織炎という非常に重篤な病気になりやすいためです。抗生物質の出現で治療しやすくはなりましたが、昔はこの蜂窩織炎で亡くなられた人が結構多かったのです。今でも入院して治療しなければなりません。
 虫歯は歯の表面に付着した歯垢に含まれる微生物(ストレプトコッカス、ミュウタンス)が糖を分解して産出した酸によってエナメル質や象牙質が脱灰されてできます。虫歯には自然治癒はありません。甘いものはなるべく避け、良く歯磨きを励行して歯垢をとり、虫歯にならないよう注意しましょう。

 
 

一般財団法人 太田綜合病院 Copyright © Ohta General Hospital All rights reserved .