太田西ノ内病院 麻酔科
今年もスズメバチに刺されて亡くなるという事故が発生しているようです。ハチといっても全てのハチが危険なわけではなく、ミツバチなどは何度襲われても一般的には命に別状はありません。最も危険なのはスズメバチ、次いで足長バチです。どちらも同じ毒を持っていますが、一匹が持つ毒の量が前者の方が多いのです。従って足長バチの大群に襲われればスズメバチ同様、致命的になることがあります。
生まれて初めてスズメバチ・足長バチに刺された場合、症状は刺された局所の痛み、発赤程度で済むことが多く、重い症状を呈することは稀です。痛み・発赤も通常は1日で回復します。スズメバチ ・ 足長バチ毒の最大の特徴は、刺された回数が増えるほど、その症状が重篤化することです。生まれて2回目に刺されると、数分のうちに全身のかゆみ、発赤が出現し、呼吸困難感やのどが腫れた感じ、声が出にくい・かすれる感じ、さらには気が遠のくような感じがすることもあります。この症状はアナフィラキシーと呼ばれ、直ちに救急車で病院へ行かないと危険です。一度毒が体に入ると、体が毒を覚えていて、次に毒が侵入してくると初回よりもひどい症状を発症してしまうのです。従ってスズメバチ・足長バチに刺されたのが2回目である場合、全身のかゆみ・発赤が出現してきた時点で直ちに救急車を要請してください。生まれて3回目以降のスズメバチ・足長バチ刺傷になると症状はさらに悪化し、刺されて数分のうちに血圧の低下により意識を失い、最悪の場合心臓麻痺に陥るのです。従って過去にスズメバチ・足長バチに刺された経験のある人が再び刺された場合、迅速な救命医療が必要なので、山にも携帯電話を持っていく、一人での入山は控えることが肝要です。アナフィラキシー症状に対して、自分で応急処置をするための自己注射も入手可能になりましたが、保険適応がなく、自費となります(約15000円)。 また誤った使い方をすると重い副作用の可能性もあり、一般的とはいえません。しかし、有効性は確実なので、過去にハチに刺されアナフィラキシー症状を起こしたことのある方で、今後も刺される可能性を心配される方は、当院の麻酔科医師に御相談ください(平日・日中の救急外来で受け付けます)。
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