太田西ノ内病院 精神科
認知症の患者さんは平成12年には約150万人ですが、人口の高齢化に伴い増加し続け30年後には300万人を越えると言われており、大きな社会問題となっています。ここでは認知症の基本的なことを述べます。
一度正常に発達した知的機能が後天的な原因によって低下し、日常生活や社会生活が営めなくなっている状態を指しています。この場合、知的機能とは記憶力・理解力・判断力・計算能力などのことです。この様な知的機能に加えて、人柄の変化もあわせて認められます。これらは認知症患者さんすべてに認められる中核症状ですが、この他に精神症状(興奮、妄想、幻覚など)や行動異常(徘徊、排泄異常行為、異食など)を場合によっては伴っています。
健康な老人でも物忘れをすることはありますが、これは必ずしも認知症とは言えません。健康老人の物忘れは人の名前や言葉がすぐに出てこないなどの、一般に言われる度忘れのことで自分自身で忘れていることを自覚していますし、理解力や判断力に大きな問題はなく、日常生活に大きな支障はありません。ただし、認知症の初期であることもあります。
認知症の原因は多くありますが、高齢者の場合、アルツハイマー型老年認知症と脳血管性認知症が認知症全体の90%を占めています。最近、アルツハイマー型認知症の症状を一時的ながら改善する薬が使えるようになり、また、種々の随伴症状を治療する薬もあります。この他の認知症の原因には内泌代謝疾患(甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症など)、頭部外傷(慢性硬膜下血腫)、脳腫瘍、中毒性疾患(アルコール性認知症)、精神疾患(うつ病性仮性認知症)、神経疾患(パーキンソン病)など多数の病気があります。この中には内科的あるいは外科的な治療で改善するものも含まれており、専門医による鑑別診断が必要です。
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