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不妊症について

太田西ノ内病院 産婦人科

 日本産婦人科学会では、不妊症を以下のように定義しています。

「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間(一般的には1)、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠に至らないもの。なお、妊娠のために医学介入が必要な場合は期間を問わない。

 これは男女とも正常妊孕能を持っている場合、避妊しない状態での妊娠率は6ヶ月までで73.8%、12ヶ月までで93.1%であり、カップルの10〜15%が不妊症であることから、1年という期間は不妊症の定期として適正であると考えられているためです。

原因

 1996年のWHO(世界保健機構)の発表では、女性のみ41%、男性のみ24%、男女ともに不妊原因がある場合が24%、原因不明が11%であり、約半数は男性に不妊原因があるとされています。
頻度順に

  1. 排卵された卵子をピックアップし受精の場となる卵管が詰まっていたり、感染や癒着などで障害されている(30〜50%)
  2. 精子の数や運動率、受精能などの異常(30〜40%)
  3. ホルモンの異常などにより排卵が障害されている(15〜20%)
  4. 子宮の奇形、筋腫などのため受精卵の着床が妨げられる(15%)
  5. 女性の子宮の入り口に分泌される頸管粘液と精子の不適合、女性の血液中に精子を殺す抗精子抗体があるなどの免疫性因子(5〜15%)
  6. 子宮内膜症(※)病変が腹膜の表面にあると炎症のため腹腔内の受精環境を悪くする。内膜症は卵管の癒着・閉塞の原因にもなり、卵巣にできて卵子の産生を低下させることもある(20〜35%)

などが挙げられます。

検査

 まず外来で基礎体温や超音波断層法で排卵の有無・時期を診断し、血液中のホルモン検査、精子の数や機能の検査、卵管造影(膣から子宮の中に造影剤を入れ、子宮の形や卵管の通過性をみるX線検査)などを行い、必要があれば腹腔鏡検査(おなかの中に内視鏡を入れ、子宮や卵管を直接観察する)も行います。

治療

 原因に沿って、排卵障害には排卵誘発剤、精子の異常や頸管粘液と精子の不適合には人工授精(時に体外受精)を行います。筋腫や子宮奇形は必要に応じて手術、卵管の閉塞や癒着に対しては腹腔鏡や卵管鏡による内視鏡下手術・開腹による顕微鏡下の卵管形成術などの手術あるいは体外受精を行います。そのほかホルモン異常に対しては薬物治療など、様々な治療法があります。

※子宮内膜症とは、子宮の内側を覆う子宮内膜という組織が、子宮の内側以外の場所(子宮の壁の筋肉の中、卵巣、腹膜の表面など)にできる疾患で、月経の時期に出血をおこし、痛みや炎症、癒着を起こします。

 
 

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