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クラミジア感染症

太田西ノ内病院 産婦人科

 Chlamidia trachomatisは、近年女性性器の子宮頸管炎や骨盤内感染症(pelvic inflammatory di sease ; PID)の病原微生物として重要な位置を占めていることが漸次明らかにされてきた。特に性感染症(STD)である非淋菌性炎症性疾患(子宮頚管炎)の主要病原体として注目を浴びている。
 クラミジアは偏性細胞寄生体のいわば最近の一種であるが、普通の細菌やウイルス、リケッチアでもない病原体(グラム陰性細菌に類似した微生物)といえ、発育サイクルは早く、特異な封入体を形成する。
 C.trachomatisの感染は、女性では男性に比べて特定の症状を現さないため、最近までその実態が明らかではなかった。しかし、非淋菌性尿道炎の原因の多くがC.trachomatisであることが明らかになるに伴い、クラミジア感染症は近年増加の一途をたどる男性と同じく、女性においても感染頻度の上昇が見られてきた。
 治療としては、テトラサイクリン系、ニューキノロン系、およびマクロライド系薬剤の経口剤が用いられる(7〜14日)。妊婦に対してはマクロライド系薬剤が用いられる。

Chlamidia trachomatisの感染経路

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表1 クラミジア感染症の病変

一次病変 二次病変
1.子宮頸管炎、子宮内膜炎
2.子宮付属器炎
3.骨盤腹膜炎
4.肝周囲炎
   (Fitz hugh curtis症候群)
5.絨毛膜炎
6.羊膜炎
1.卵管周囲癒着
2.卵管狭窄
3.卵管閉塞症
4.卵管溜膿腫
5.卵管溜水腫

表2 クラミジア感染症の診断

症状に乏しい 子宮頸管炎、帯下感  
症状がある 骨盤腹膜炎
性交痛、下腹痛、内診痛
症状を見逃さない
激しい症状がある 劇症型の上腹部痛
Fitz hugh curtis症候群
 

表3 クラミジア感染症の腹腔内への波及

1.初感染時には、子宮頸管炎となるが症状に乏しく、感染を自覚しない。
2.そのまま腹腔内に侵入して、子宮付属器炎や骨盤腹膜炎を発症する。
   この場合も必ずしも自覚症状があるとはいえない。
3.慢性の無自覚性骨盤内感染が持続し、不妊症につながる。
4.菌量が多いときには、劇症型の骨盤腹膜炎を発症することがある。
 
 

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