太田熱海病院 眼科
眼球はちょうど水で満たされたボールのようなもので、毛様体という部分で作られた眼の中の水(房水といいます)の量と、黒目の隅の部分(隅角)にある線維柱帯というところから流れ出る房水の量とのバランスで眼の内圧が決まります。この眼の内圧(眼の硬さ)を眼圧といいます。眼圧の正常値は10〜21mmHgです。
いわば房水の排水溝である線維柱帯には無数の小さい孔が開いていますが、この孔が目詰まりを起こすと房水の流れが悪くなり、眼の中に水が溜まるようになって眼圧が上がります。これが緑内障です。しかし、日本では眼圧が正常であるにもかかわらず緑内障となる「正常眼圧緑内障」が普通の緑内障の3倍ほど多く、眼圧だけを調べても緑内障とは診断できません。
眼圧が上昇すると眼の中にある視神経線維が圧迫されて委縮してしまい、少しずつ視野(見える範囲)が狭くなってしまいます。しかし、これは徐々に進行するので、自覚症状がないことが多く、知らないうちに非常に視野が狭くなってから初めて気がつくことも多いです。つまり、眼圧だけでなく、視神経をみる眼底検査や、視野の検査などが緑内障の診断にはとても重要です。
緑内障と診断されたらすぐに治療を始めます。まず、点眼薬によって眼圧を下げるようにします。点眼薬には房水の産生を少なくする作用や、房水の排出を促進する作用があり、2〜3種類の点眼薬を併用することもあります。目標とする眼圧は個人差もありますが、多くの場合14〜16mmHg以下に維持します。また、正常眼圧緑内障では12mmHg以下にしなければならないこともあり、定期的に眼圧測定や視野検査を行って決定します。
数種類の点眼薬を組み合わせても眼圧が充分に下がらない場合は手術を行います。
緑内障の手術は眼圧を下げる手術で、委縮した視神経を治す手術ではありません、一度委縮した神経はどんな治療をしても治すことはできません。つまり、狭くなった視野が手術によって広がることはなく、手術は症状の進行をくいとめるために行うのです。
緑内障の一般的な手術は、隅角部の強膜に小さい孔を作って、そこから房水が結膜の下へ流れ出るバイパスを作るというものです。
最近その手術の変法として、強膜を弁状に切り、線維柱帯の内側の組織を薄く削ぐだけで強膜の孔は開けない非穿孔濾過手術が行われるようになりました。この方法だと、眼球に対する刺激(侵襲)が少なく、眼内の出血や、房水が外へ過剰に流れて出てしまう合併症を少なくすることができます。緑内障のタイプによって異なりますが、この方法が大変有効な場合も多く、当科でもこの方法を採用しています。
日本の統計では、40歳以上の人口の約3.6%(約200万人)が緑内障を患っていて、しかもそのうち治療を受けているのは20%の40万人にすぎず、残りの160万人は自分が緑内障であることに気づいていません。また、緑内障と診断されて治療を開始しても、神経が高度に委縮してしまった人では眼圧コントロールが良くても、次第に委縮が進行してしまうこともあります。
ですから緑内障は視野障害が悪化する前に、できるだけ早く発見し、早期に治療を始めることが大切です。
健康診断で眼科受診を勧められた方や、家系に緑内障の患者がいる方(遺伝によって発現する緑内障があります)は眼科を受診して下さい。
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