太田西ノ内病院 泌尿器科
勃起不全(EDと略されます)の前に、勃起のメカニズムについてお話しします。性的空想、視聴覚からの刺激、陰部の刺激が存在すると大脳の性中枢は興奮します。この興奮が脊髄を伝わり勃起神経に到ると、陰茎の動脈は拡張し陰茎海綿体という場所へ流れ込む血液量が増えます。同時に陰茎海綿体平滑筋が弛緩することにより陰茎海綿体へ流れ込んだ血液は逃げ場を失って、十分な硬さを伴った勃起が完成します。EDとはこのメカニズムのどこかに問題が生じ、性交時に有効な勃起が得られず満足な性交が行なえない状態を指します。
原因として考えられるのは、薬剤、放射線照射、手術、外傷、脊椎脊髄の病気などです。これらは勃起に関係する神経血管にダメージをあたえる可能性があるからです。また心理的ストレスが存在すれば、刺激があっても大脳性中枢が十分に興奮しませんからEDの原因になります。加齢や生活習慣によるEDは、動脈硬化による陰茎海綿体の血流障害やホルモンバランスの崩れなどが原因と言われています。ではEDに悩む患者さんが医療機関を受診した場合、どんな検査をするのでしょうか。
まず医師は患者さんからお話を伺ってから、お腹や陰部の診察をし、その要因を推察します。しかし必ずしも特定出来る訳ではないため、効果が期待出来る患者さんであれば負担が最も少ない薬剤投与(クエン酸シルデナフィルまたはクエン酸バルデナフィル)が第一選択となることが普通です。効果がない場合には更に詳細な検査、治療が必要となってきます。心理的ストレスが原因の場合にはカウンセリングが有効なこともあります。
EDは家族や知人に相談しにくい問題です。そしてそれ自体が命に関わる病気ではありませんから、患者さんが一人で悩んでいるケースが多いようです。ある調査によれば日本の既婚男性の約30%が勃起障害を自覚していると報告しています。EDは決して珍しい病気ではありません。困っている方は是非当院泌尿器科を受診してみて下さい。
【参考文献】
・Urology View(Vol.2 No.1, 2004)
・泌尿器外科(vol.16 No.5 2003)
・白井將文:わが国のED 患者の動向(Modern Physician 19: 1081-1083,1999)
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