太田西ノ内病院 泌尿器科
厚生省感染症サーベイランス研究班の報告では、Sexually transmitted disease(STD)は1980年代前半に淋病の激増傾向を生じたが、エイズキャンペーンにより1984年をピークとして減少傾向になってきました。しかし、1995年以降、性器クラミジア感染症、淋菌感染症が急増しています。又、1991年までは淋病感染者が首位を占めておりましたが、1995年からは性器クラミジア感染症が首位となっております。この両者は、性器ヘルペスや尖圭コンディロームよりも圧倒的に流行しております。
淋菌感染症は、感染機会より1週以内の潜伏期間の後、外尿道口よりの膿の排泄、排尿時痛及び外尿道口の発赤が認められます。診断は分泌物のグラム染色標本鏡検と分離培養同定法です。治療法は、従来ペニシリナーゼ産生淋菌などに強い抗菌力を示すキノロン系薬が第1選択薬として繁用されてきましたが、最近キノロン系薬に対する耐性化が急速に進行しており、今後は耐性菌の出現のほとんど問題になっていないセフェム系薬剤やスペクチノマイシンなどの使用が望まれます。
性器クラジミア感染症は、性的接触により1〜2週間後の長い潜伏期の後に、軽度の排尿時痛と淋菌による膿性と異なる漿液性の尿道分泌物を自覚します。女性では、子宮頚管炎は無症候性か、あっても帯下の増加、性交痛、下腹部不快感です。診断は尿中に剥離した感染尿道上皮細胞内の菌体(核酸又は抗原)検出法が一般に行われているようです。治療法は、ニューキノロン系薬、テトラサイクリン系薬、マクロライド系薬の3種類ですが、耐性化の報告はほとんどありませんので、どれも効を奏しますが、7〜14日間の長い治療期間が必要です。
又、淋菌感染症の15〜30%にクラジミア混合感染が認められますので、混合感染例に対してはまず淋菌に対する治療を行い、淋菌消失後にクラジミアに有効な薬剤を追加投与することが必要です。
STD感染予防にはコンドームの正しい使用法が一番望まれます。
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