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動脈瘤とくに腹部大動脈瘤について

太田西ノ内病院 心臓血管外科

 大人の心臓から送り出される血液は一分間に5リットル以上。それを全身に配る最も太い血管が大動脈と呼ばれます。動脈瘤は主にこの大動脈に発生し、風船に少しずつ息を吹き込むように膨らんでゆき、破裂によって生命を一瞬にして奪ってしまう病気です。成人病の増加に伴って大動脈瘤の発症も増えているはずですが、その診断率はまだ向上していないのが現状です。大動脈瘤の好発部位は心臓の出口付近、背中付近(胸部大動脈瘤)、そしてちょうど臍のあたりの腹部大動脈です。胸部大動脈瘤がレントゲン写真で発見されやすいのに比べて、腹部大動脈瘤は発生頻度が高くても自覚症状がほとんどなく、レントゲンにも写らないので、なかなか見つからないのが現状です。おなかに心臓が移動してきたような気がするとか、ドキドキするコブが触れるといった自覚症状のある患者さんはごく稀です。統計によれば日本には約120万人の腹部大動派瘤の患者さんがいるはずですが一年間の手術件数はわずかその0.3%に留まっています。一方破裂で亡くなっている方は、年間約2000人にも達しており破裂後の手術での救命は非常に困難です。診断はおなかを触れる触診、更に超音波、CT検査で確実にできます。治療は、手術で動脈瘤を人工血管に置き換えるものが主流ですが、ハイリスクな患者さんには、ステントグラフト内挿術により、手術の負担が軽減されています。。当院では年間約40人の患者さんが手術を受けられ、これまでの最高齢は91歳の女性です。技術と医療機器、人工血管の進歩によって最近では入院期間は約2週間と短縮されました。手術中の出血を患者さんに戻す装置によって輸血の必要も少なくなり手術の安全性は高まっています。高血圧や糖尿病、肥満や高脂血症などの素因をお持ちの方は特に、人間ドックや専門医の診察をお受けになることをお勧めします。

 
 

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