太田熱海病院 消化器科
健康診断で指摘される肝嚢胞は通常、腹部の超音波検査(腹部エコー検査、以下エコー検査)で発見されます。エコー検査による検出頻度は3〜15%前後といわれていますが、検査機会が増えるに従って増加傾向にあります。
肝嚢胞には、病因病態的に多様な疾患が含まれています。多くは先天性で、孤立性あるいは多発性に種々の大きさで出現します。これらは症状もなく肝機能も正常であることが多く、出血や破裂の危険性も少ないことから、通常は経過観察するだけで特別な処置はおこなわれません。
また、腎臓や膵臓、脾臓などにも嚢胞がみられる場合があり、多嚢胞性疾患と呼ばれています。このような場合には腎障害をはじめ種々の内臓障害を伴うことがあり注意を要します。稀な疾患として、多発性管内胆管拡張をきたすCaroli病なども先天性疾患に含まれます。後天性に出現する肝嚢胞としては、外傷後や炎症性疾患による貯留性嚢胞や、類皮嚢腫や嚢胞腺腫のような良性の腫瘍性疾患や悪性の嚢胞性腫瘍などがあります。寄生虫の感染などで嚢胞を形成したり、転移性の腫瘍が嚢胞状を呈している場合も稀ながらみられます。
このように種々の病因で嚢胞を形成することから、健診結果だけから病因を特定することはできない場合も多いのです。またエコー検査だけでは、嚢胞か腫瘍かの判別が困難なこともあります。そのため必要に応じて腹部CT検査やMRI検査などもおこなって、総合的に判断する必要があります。明らかに良性の肝嚢胞であることが確認できれば、増大傾向がないかどうかを定期的に調べるだけで構いません。通常はエコー検査で経過をみます。
治療をおこなわなければならないケースは、悪性の嚢胞性腫瘍や嚢胞内に出血や感染を起こしたものなどです。巨大な嚢胞で腹部に圧迫症状が強いなどの場合も治療対象になります。手術療法が原則ですが、内科的に治療をおこなうこともあります。術式としては、嚢胞壁剥離切除術、開窓術、部分肝切除術などがありますが、最近では腹腔鏡下手術も導入されています。内科的におこなう場合は、エコーガイド下に嚢胞を穿刺して排液した後、薬液を注入する方法が一般的です。
肝嚢胞を指摘された殆どの方が良性の肝嚢胞と言われたのではないでしょうか。数がちょっと多くても心配いりません。大きさもあまり気にすることはありません。日常生活も普通にしていて良いのです。気になることがありましたら、専門施設を受診して担当医にご相談ください。
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