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胃潰瘍は感染症か

太田熱海病院 消化器科

 胃潰瘍は、精神的ストレス・アルコール・タバコ・痛み止めなどの薬が原因と考えられていましたが、「ピロリ菌」感染が最も関与していることがわかりました。胃潰瘍は感染症であるといっても、言い過ぎではありません胃の中は強い酸性であり細菌が生存できる環境ではないというのが定説でしたが、1979年、オーストラリアの病理医ウォーレンが胃粘膜内に細菌が存在することを発見し、研修医マーシャルとともに研究を進め、1982年に「ピロリ菌」の分離培養に成功し世界中の注目を集めたのです。
 腹痛などの症状があり内視鏡検査で胃潰瘍と診断されれば、ほとんどの方は内服薬で良くなります。 しかし一度良くなっても内服をやめると再発することがありました。除菌療法(内服薬でピロリ菌を殺す治療)が成功するとほとんどの方は潰瘍の薬を飲まなくとも再発がなくなります。胃潰瘍の再発で困っている方は、ぜひ除菌療法を試みてください。抗生物質と胃酸を押さえる薬を組み合わせ、1週間内服する治療です。
 ピロリ菌の検査は、内視鏡で組織を採取して検査する方法や、血液・尿・便を調べる方法などがあります。呼いた息を分析して検査する「呼気テスト」は、簡単な検査ですが精度が優れており広く行なわれています。
 ピロリ菌に感染していても、すべての人が胃潰瘍になるわけではありません。実際は何の病気も発症せずに健康で生活している人が多いのです。ピロリ菌は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍のみならず、胃MALTリンパ腫、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除(EMR)後、萎縮性胃炎、胃過形成性ポリープなどとの関連や、胃癌の原因としても注目されています。消化管以外の疾患でも、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹など、除菌療法で改善することがある疾患があります。

 
 

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