太田西ノ内病院 呼吸器科
慢性副鼻腔炎は、一般に蓄膿症と呼ばれている耳鼻咽喉科領域の病気です。意外に厄介な病気で、保存的な治療法では治りきらず、しばしば手術を必要とすることは、皆様もご存知だろうと思います。ここでは、それが内科の呼吸器疾患と密接な関係があることをご紹介します。
ある統計によれば、慢性気管支炎や気管支拡張症をもつ患者の約50%、びまん性汎細気管支炎の患者の80%に、慢性副鼻腔炎の合併がみられるのです。従って、副鼻腔気管支症候群という名前で呼ばれることがあります。どうして副鼻腔と気管支が相互に関連するのか、本当のところはまだ分かっていません。昔は、副鼻腔から下りてくる鼻汁、膿汁が寝ている間に気道のなかに入るという説が有力でした(検出される細菌が同じ)。いまでも、その現象は起きると信じられていますが、副鼻腔気管支症候群のすべてを説明できません。他の説は、鼻から気管支の末梢までは、発生学的に(受精卵が発達分化して胎児になる過程)同じ起源をもち、異物を外に排出するために粘膜の表面にある線毛の機能障害が原因ともされています。この後者の説は、遺伝的な要因が大きいともいわれます。面白いことに、無動線毛症候群(immotile cilia syndrome)といって、線毛の構造に生まれついての欠陥があって、そのために精子が動かないための男子不妊症や、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎などが幼小児期から発生する病気があります。その約半数には内臓逆位症(例えば心臓が右にある)を合併します。こうしてみると、蓄膿症とか、気管支拡張症という診断がつけられたら、場合によっては十分な吟味が必要ということになります。特に小さいお子さんで慢性副鼻腔炎という診断がついたら、小児科や呼吸器内科に相談してみることも必要かもしれません。
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