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からだの気腔と気圧障害

太田西ノ内病院 呼吸器科

 からだの気腔とは、からだの中にある空気のスペースをいう。 最も大きな気腔は気管支・肺系
で、その他、中耳、副鼻腔、腸内ガスなどがある。 皆様が経験される気圧障害の例は、高層ビルのエレベータに乗った時や、水中に潜った時に、耳の中がキーンといったり痛みを感じたりすることである。 これは、鼓膜の内側(中耳)と外側(大気圧)の圧力のバランスがとれないために起きる。中耳は耳管を介して外界と交通しているので、それが開けば問題がないが、風邪などで塞がっていると起きやすい。潜水をした場合には、深刻な問題を起こすことがある。例えば息こらえ潜水では、水深10mごとに1気圧ずつ体の周囲の圧力が増し、squeeze といって肺が押し潰されたり(理論的には20m以上の潜水で発生の可能性がある)、SCUBA ダイビングで浮上して来るときに息を止めていると、burst lung といって肺が破裂してしまうことがある。
 人工呼吸中の患者さんでは、呼吸器から圧力のかかった空気が送り込まれるので、時に肺に穴があいて気胸を起こしたり、縦隔という部分に空気が入って気腫を起こす。 自然気胸という病気は、生まれつき肺に小さな袋を持っている人や、何らかの病気で肺が破れやすくなっている場合に、そこから肺内の空気が胸膜腔にもれて肺が潰れてしまう病気である。通常、胸膜腔は陰圧になっていて、肺が広がるようになっているのである。
 興味深いことは、同じ哺乳動物でも、アザラシなどは一挙に数100m潜ったり浮上したりしても何も起きず、しかも30分以上も息をしないでいられるのである。いずれ後で、そのメカニズムなどを説明するページを設けたい。

 
 

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