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在宅酸素療法

太田西ノ内病院 呼吸器科

酸素吸入装置とは

 慢性呼吸不全のため酸素吸入の必要があると認められると、担当医の酸素吸入の処方に基づいてご自宅で酸素が常時吸入することが出来るように設備をします。このことを在宅酸素療法と言います。酸素を吸入する装置には3種類あります。最も普及しているのが酸素濃縮装置と呼んでいる機器です。100ボルトの家庭用の電源で作動する装置で、現在は毎分1g以下の少量から、装置によっては毎分5gの高流量までの酸素を供給できます。他には液体酸素と圧縮酸素を充填した酸素ボンベの方法があります。本邦は電気が全ての家庭に普及しているので酸素濃縮器(図左)と外出用の酸素ボンベ(図右)を組み合わせて利用するのが一般的なやりかたです。

酸素濃縮装置 酸素ボンベ
酸素濃縮装置(自宅) 酸素ボンベ(外出時)

どうして、酸素を吸うと呼吸不全の治療になるのでしょうか。

 平地に生活していると、大気圧が760mmHgですから、酸素が大気の21%なので、肺の中は37℃の飽和水蒸気圧でみたされているので150mmHgの酸素分圧になります。肺で取込まれて動脈血では90mmHgに低下します。それが病気になって酸素が取込まれにくくなると60mmHg以下になり呼吸不全になります。そこで大気の酸素より高い酸素を吸入すれば動脈の酸素分圧も上げることができるのはお分かりいただけると思います。一般的に毎分1g酸素の吸入につき4%づつ吸入酸素濃度が上昇するとされていますつまり、酸素3gを吸入することは33%の酸素を吸入していることに相当します。こうやって酸素濃度を調節することで動脈酸素分圧を最適な状態に保つことができます。現在ではパルスオキシメータという装置を使えば簡単に動脈の酸素分圧が測定できて動脈の酸素分圧を最適にセットすることができます。
 在宅酸素療法が医療保険の適応になるのは比較的安定した慢性呼吸不全の患者さんです。呼吸不全になった原因の基礎疾患の大部分はCOPDですが、肺線維症や肺癌、肺高血圧症などが原因の患者さんも稀ではありません。毎月1回の外来受診をして呼吸不全の状態のチェックをすることが在宅酸素療法を続けるための医療保険のルールです。

 
 

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