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非結核性(非定型)抗酸菌症

太田西ノ内病院 呼吸器科

結核菌と非結核性抗酸菌

 抗酸菌には結核菌と非結核性抗酸菌があります。結核菌はヒトからヒトに感染する代表的な伝染病の1つです。非結核性抗酸菌は環境中に常に存在していて、偶々ヒトにも感染することがある細菌です。昆虫や動物、ヒトを介して感染する伝染病ではありません。 ところが抗酸菌は痰の検査で見つかったときには両者を区別することはできません。でも、現在では遺伝子検査により短時間で区別することができるようになりました。

いろいろある非結核性抗酸菌

非結核性抗酸菌にはたくさんの種類がありますが、そのなかでヒトに感染することが一番多いのがアビウム・コムプレックス(通常MACと呼ばれています)というタイプです。それ以外ではカンザシイも感染を起こします。その他にも多種の菌による感染の報告がありますがいずれも稀です。

肺MAC症

一番多いMACによる肺感染症についてご紹介します。感染を受ける宿主であるヒトの特徴により3つのタイプがあります。第一が結核後遺症の合併症として起こるタイプです。

第二がエイズ患者に併発してくるタイプです。さらに第三が最近注目されているタイプで、中年から高齢の女性で基礎疾患のないこれまで肺に異常がなかった方に発症するタイプです。この第三のタイプは結核との区別に気を付けなくてはいけません。
肺MAC症なら、ヒトへの感染を起こさないので結核と違って隔離の必要はありません。別名ウインダミア卿夫人症候群とも呼ばれています。イギリスの著名な作家にオスカーワイルドがいます。皆さんは『幸福な王子』の作者と言えばお分かりになるでしょう。その作品に『ウインダミア卿夫人の扇』があります。主人公が大変にしとやかな女性であり、そういったひとが痰を吐くなんてハシタナイことはしたくてもできない。だから、咳をして痰を出すといった気管支を綺麗にできないために起きてくるに違いないと考えてそのご婦人に因んで名づけられました。

肺MAC症の胸部CT画像
【肺MAC症の胸部CT画像】

ウインダミアというのはイギリスの湖水地方にある有名な湖の名前です。日本なら差し詰め『猪苗代姫症候群』といったところでしょうか。この病気の経過は良好なことが多く治療の必要がありませんが、一部に慢性の炎症が進み、肺が破壊されてしまうことがあるので、その際には治療を行います。結核と共通する薬を数種類使用しますが、効果が弱く長期に服用することになります。ですから、肺MAC症が診断された方は定期的に通院して胸部レントゲンで経過を見る必要があります。

 
 

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