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サルコイドーシス

太田西ノ内病院 呼吸器科

サルコイドーシスは全身の病気

 サルコイドーシスという病気の名前を初めて聞く方も多いかもしれませんが、厚生労働省の特定疾患(いわゆる難病)の1つです。現在この病気の方は人口10万人に8名程度、毎年新しくこの病気を発症するのは人口10万人に0.7名ぐらいです。若い人が職場の健康診断の際に撮影した胸部レントゲンで発見されることが多い病気です。通常自覚症状はありません。しかし、一部の患者さんには皮膚症状(32%)、眼症状(24%)を伴います。特に眼症状は、放置すると視力が失われる危険があるのでサルコイドーシスでは治療の適応が最も多い病態です。別項(144.ぶどう膜炎とサルコイドーシス)でも取上げているので参考にしてください。

両側リンパ節腫大 各臓器の発生頻度
  両側リンパ節腫大(BHL)   各臓器の発生頻度
 

サルコイドーシスは原因不明

この病気は主として肺とリンパ系に発病する原因不明の全身性肉芽腫性疾患です。 発症すると細胞性免疫が障害されるのでしばしば陽転していたツベルクリン反応が陰転化することが知られています。この病気は40歳以下の成人に目立ち、特に20歳台にピークがあります。また、北欧と日本では50歳以上の女性にも第2のピークがあります。

心臓のサルコイドーシスには注意

稀ですが、生命の危険を伴うものとして心サルコイドーシスがあります症状は不整脈です。特に致死的不整脈とされる心室性不整脈での頻脈には注意が必要です。確定診断には心臓カテーテルにより心筋の一部を採ってくる心筋生検が必要ですが、侵襲の少ない核医学心筋シンチなどの画像診断や他の部位での生検診断、心電図や24時間心電図の解析などから総合的に診断して治療をすることもできます。ドイツでは5%に心サルコイドーシスの所見があったそうです。他に神経や筋肉などにも障害をきたすことがあります。また肝臓には高頻度に病変が存在すると言われていますが、症状を起こすことは稀です。

サルコイドーシスの診断はどうするのか

サルコイドーシスを疑われたときに行なう基本的検査は胸部CT、肺機能検査、心電図、血液検査、眼科的検査です。確定診断は病変部からサンプルを採取(生検と言います)サルコイドーシスに特徴的な肉芽腫を顕微鏡的に証明する必要があります。皮膚は比較的採取しやすい場所ですが、気管支鏡を利用して肺生検をするとレントゲンで異常がみられない患者さんでも高率に顕微鏡的に肉芽腫が見つかります。血液検査ではアンギオテンシン転換酵素(ACE)が上昇することが知られています。肺機能検査では拡散機能が障害されます。

サルコイドーシスの治療

肺門リンパ節と肺野病変はほとんどの患者さん(90%以上)に出現します。しかし、その大半を占める胸部所見だけの患者さんは無治療でも2〜3年程度で2/3近い患者さんが自然によくなるので薬物治療の対象になりません。ごく稀に息切れの自覚症状が強く肺障害が肺線維症に進む危険性があるときには副腎皮質ホルモンを用いたステロイド治療を行ないます。多くは治療に反応して改善を示しますが、減量または中止すると再燃するために長期間に渡って治療が必要になることがあります。他に免疫抑制剤を使用することもあります。

 
 

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