太田西ノ内病院 呼吸器科
若い女性に多い過換気症候群について簡単に説明をしておきましょう。私たちが、深く早い呼吸をすると、頭がボーッとして、苦しくて続けられません。ところが、100人に1人弱の割合で、この大きな呼吸が止められなくなってしまう人がいます。そうなると、動脈血のなかの二酸化炭素が異常に低下して、血液はアルカリになって、非常に多彩な症状を呈してきて、診断に窮することもあります。過換気の発作の時は、冷静に自分の呼吸をみれば、大きく深い息をしています。いくら吸っても空気が薄いように感じたり、呼吸困難を訴えます。頭はボーッとして、意識を失うこともあります。唇や手指がしびれたり、突っ張った感じになったりします。胸が痛いとか動悸がするなどの循環器の症状が全面に出たり、腹痛や悪心などの消化器症状が出ることもあります。急性発作の時は比較的診断は容易なのですが、発作が治まってから来院された場合には、多くの患者さんが、自律神経失調症とか、ノイローゼといった診断をされることが少なくありません。しかし、この病気の本体は、ストレスが加わることから不安を生じ、それがまたストレスになって症状をおこすという悪循環によっておきる機能的な病気なのです。笑い話のようですが、外国旅行をしたことのない、頼りない新郎と海外に新婚旅行に行った新婦にしばしば発生します。新婚旅行症候群などという別名もあるくらいです。発作を止めることは簡単で、紙袋を使って自分の吐いた息を再呼吸させればよいのです。しかし、なんども繰り返す患者さんの治療には多少のコツがありますし、発作でない時に来院された患者さんの診断にも若干の知識が必要になります。若い女性のため息と書いた理由は、外来診察中になんどもため息をつくとか、肩で息をするなどの観察が必要だからです。昔は、若い女性に好発するとされましたが、最近では男性にも珍しくなく、また40歳台にも発症のピークがあります。呼吸器の専門医か、精神科を受診してください。
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