太田西ノ内病院 呼吸器科
喫煙がさまざまな病気の原因になることは、すでに良くご存じでしょう。例えば、肺がんになる、心臓病になるなどです。不思議なことに、喫煙者に少ない病気もあるのですが、本項の主題から外れますので、そのことには触れません。
皆さんは、COPDと呼ばれる病気をご存じでしょうか。日本の医師は、肺気腫、慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎の3つの病気をまとめて慢性(Chronic)閉塞性(Obstructive)肺(Pulm onary)疾患(Disease)と呼び、その英語の頭文字がCOPDという訳です。日本の医師は、と申したのは、欧米ではびまん性汎細気管支炎という病気の存在自体を疑っているからです。従って、外国の教科書は、COPDと言えば肺気腫と慢性気管支炎のことだと書いてあります。その影響を受けて、日本の教科書では、慢性気管支炎の項目に大きな頁数をさいているのですが、日本では本当の慢性気管支炎はほとんどないと言っても過言ではないくらいなのです。念のために書いておきますが、慢性気管支炎という病気は、急性気管支炎が慢性化したものではなく、定義は若干曖昧ですが、独立した疾患なのです。
そうなると、COPDという病気は肺気腫のことだと言ってもよいのです。肺気腫という病気は、遺伝的な素因でなる場合が稀にありますが、まずは喫煙によって起こると考えてよいのです。肺の終末細気管支という細い気管支から先の肺胞までは、破壊され拡張する病気です。この病気は初めは労作時(体を動かした時)に息切れを自覚するくらいで、あまり症状がありませんが、肺機能検査をすると、息を吐く力が著しく低下していることが分かります。ひどくなるのは60歳を過ぎてからですから、気がついた時はすでに遅く、その後ジワジワと呼吸困難などが強くなって、呼吸不全になります。ですから、ある意味では、長く苦しむ分だけ肺がんより悪性だということも可能なのです。喫煙開始の年齢が若いほど発症しやすいので、若い人は、ぜひ禁煙をしましょう。
一般財団法人 太田綜合病院 Copyright © Ohta General Hospital All rights reserved .