太田西ノ内病院 呼吸器科
感染症が大問題だった時代から、今ではがんや生活習慣病とともに花粉症などのアレルギー疾患に関心が集まっています。気管支喘息は呼吸器の分野でもっともポピュラーなアレルギーが関係する疾患です。年代を問わず幼児から高齢者まで多くの人々がこの病気で悩んでいます。その頻度(有病率と言います)は人口100人に3から5名(3から5%)です。もう少し詳しく言うと、世界中で3億人の喘息患者がいるとされ、20年前に比べるとどの国からの報告も気管支喘息患者は増加をしています。今の状態が続けば、2025年にはさらに1億人の患者数の増加が予想されています一方、わが国では厚生労働省の調査によれば、患者数は450万人で、小児の6%、成人の3%が気管支喘息です。因みに世界の人口は61億人、日本の人口は1億2千700万人です。
気管支喘息の全てがアレルギーで起こるわけではありません。しかし、70%の患者さんに何らかのアレルギーがあると言われています。代表的なアレルゲン(アレルギーの原因物質)はダニです。生活が豊かになり室内環境が快適になったのでダニも1年中繁殖できるようになりました。それと、ペットを室内で飼育するようになったために、イヌやネコのフケがアレルゲンとして重要になってきました。その他のペットが原因になることも珍しくなくなりました喘息発作はアレルゲンに接触することで誘発されますが、最大の誘因は上気道感染(いわゆる風邪のこと)です。ですから、秋から冬に発作をおこすことが多いようです。気候の変化、とくに気圧の低下などの影響を受けることもよく言われています。
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ダニ | フトンの掃除 | ダニ対策 |
治療法は確立されて、全世界で共通の治療ガイドラインがGINA(ジーナ)の愛称で広く普及しています。ですから、世界中どこへ行っても治療は同じに受けられますから安心して海外旅行にお出かけになってください。薬が良く効くので患者さんが病気をよく理解して自己管理できれば病気があっても心配は全くありません治療のポイントは患者さんの自己管理と薬のうち吸入ステロイドの使い方です。
喘息発作(現在は気管支喘息が慢性疾患と考えるので急性増悪と呼んでいます)は気管支拡張剤を吸入と内服、点滴静注と副腎皮質ステロイドを内服または注射で使用します。急性増悪の強い呼吸困難が収まると、吸入ステロイド剤を中心とした慢性気道炎症を抑えることで急性増悪を防止する治療を行ないます。同時に長時間作用型の気管支拡張剤やロイコトルエン拮抗薬などを併用して作用を補強します。
気管支喘息の急性増悪の防止には薬物だけでなく日常生活での自己管理が重要な役割を果たします。その際の指標として簡単な器具によるピークフローメータ日誌を高血圧の方が血圧を自己測定するように毎日測定して記録することで自覚症状が出現する前にわずかな気道狭窄を感知して休息や外出の中止などの自己管理をすることが大変有益です。
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