太田西ノ内病院 糖尿科
糖尿病は血糖値が少々高くても症状のでない病気です。血糖値が300mg/dlを超えますと、口渇感(のどが渇く)、多飲(水を多くのむ)、多尿(尿に何度もいく)、全身倦怠感(だるい)、体重減少などの症状が出てきます。空腹時血糖値が126mg/dl以上、食後血糖値が200mg/dl以上であれば、糖尿病が強く疑われます。
人間は、痛いなどの症状があって初めて病院を受診します。糖尿病はこの症状がないのです。この症状がないために、糖尿病を放置してしまい、病院を受診しない方がいます。
しかし、糖尿病を5年、10年と放置しておきますと、糖尿病の合併症がじわじわと出てきます。この糖尿病の合併症としては、生命を脅かす心筋梗塞、脳梗塞があります。また、生活を困難なものにしてしまう3大合併症というものがあります。この三大合併症は糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症と呼ばれます。
糖尿病性神経障害とは、両側の足や手がしびれたり、感覚がにぶくなったりします。感覚がにぶくなると足にけがをしても痛みを感じないために放置してしまいます。このけがから細菌(バイ菌)が入り徐々に足が腐っていきます。この状態を糖尿病性壊疽(えそ)といいます。ある有名歌手が、足を膝下から切断したのはこの壊疽のためです。片足がなくなった時の生活を考えてみてください。
糖尿病性網膜症とは、目の視力に関係する網膜という部分に障害が出てきます。網膜症が悪化すると、突然視力が悪化し、時に失明してしまいます。現在1年間に4000人の人が、糖尿病で失明しています。失明した時の生活を考えてみてください。
糖尿病性腎症とは、腎臓の働きが障害され尿にタンパクがもれてきます。人間は、お肉やお魚を食べて肝臓で体に必要なタンパク質をつくっています。腎臓が障害されると、このお肉やお魚を食べて、お肉やお魚の栄養が尿に出ていってしまうということになります。尿にタンパクがもれ、血液中のタンパク質が少なくなると、足や顔がむくんできます。さらに、腎臓の働きが悪化すると尿が出なくなってしまいます。尿が出なくなると、体の毒を尿として出せないため尿毒症という病態となります。尿毒症になると、人工透析をしなければ生きていけません。一日おきに病院にきて、4〜5時間の時間をかけて体の毒を体外にだすことを人工透析といいます。現在、年間1万人の人が糖尿病で人工透析を開始されています。一日置きに病院に通い、5時間病院で透析を受ける生活を考えてみて下さい。この三大合併症は、症状のないままじわじわと体を蝕んでいくのです。このため糖尿病はサイレントキラー(静かなる殺人者)とも呼ばれています。
しかし、糖尿病をきちんと治療し、血糖値を正常に近い状態にしておけば、このような余病は出てきません。大切なことは、症状がなくても病院に通院し血糖コントロールを良好することです。
太田西ノ内病院 糖尿病センターには1ヵ月、3500人の患者様が通院しておられます。この余病をつくらないためにです。糖尿病センターでは、医師、看護婦、栄養士、運動トレーナー、薬剤師、臨床検査技師がみんなで力を合わせ糖尿病患者様のために診療をしています。糖尿病はこれらの医療スタッフと患者様が協力しあわなければ、上手く治療できません。我々はこの協力をとても大切に思っています。
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